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第二章・16

「安心しろ、ちゃんと風俗の世話になってる。今夜は金がないから自分で……、いや、お前に手伝ってもらったか」 「僕に!?」  腰をマッサージしてもらうと、前がベッドに擦れていい具合に勃ってくる。  充分昂ぶったところで、自分の部屋で始末をつけて、惠の部屋へ戻ったのだ、と瑛一は語った。 「だからお前も充分役に立って……、惠?」  瑛一は息をひそめた。  てっきり怒り出すかと思っていた弟が、妙に黙って。  そして眼から涙をぽろぽろ零したのだ。 「にい……、さ、ん……」  酷い、か? 呆れた、か? 信じられない、か?   自分の胸中を、自分で解からずにいる惠だった。  ただ、涙がこぼれて仕方がない。  兄さんに、また嫌がられるかな。だけど、涙がでてきちゃったよ。どうしようもないよ。  だが、瑛一はそんな惠を叱りもしなかったし、笑いもしなかった。  その手を取りドアの方へといざなった。 「ちょっと、外へ出るぞ」 「……」  嗚咽も無く、しゃくりあげもせず、惠は瑛一に引かれるまま外へ出た。  外の空気は思ったとおり、切れるほど冷たかった。

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