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第二章・19

 湯上りの惠が瑛一の様子を覗いた時、兄はすでにぐっすり寝入っていた。 「兄さん」  返事が無い。  惠は、瑛一の鼻をつまんだ。 「兄さん」  起きない。  そうしてようやく、この弟はいたずらっぽい目を兄に落とした。 「兄さん、おやすみのキス忘れてるよ~」  ちゅ、と短い口づけを、惠は瑛一に贈った。  そして髪を乾かし、その隣へと潜って行った。  瑛一と惠、ふたりで一つの寝具を使って、温かな夢を見た。  星の煌めく夜空で遊ぶ、夢を見た。

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