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第三章・2

 こんなスキンシップから体の関係へ移っていくなど、女とはあたりまえにやってきた事なのだ。  湯あがりの良い香りがする惠の肌に、ぞくりと来る日もあった。  しかし、惠は血の繋がった兄弟だ。 (さすがに、間違いは犯せないか)  先に寝落ちてしまった弟の髪を、さらりと梳いた。  それに、惠は瑛一にセクシャルな危機感をまるで持っていない風に見える。  心の底から信頼して、腹を撫でさせるなど平気でやっているのだ。  その信頼を裏切れば、彼はひどく傷つくだろう。    キスも、最近では全くやっていない。  いや、キスすること自体、何か奇妙な熱気に侵されていたのだろう。  兄弟でキスは、普通やらない。 「寝るか」  ごろん、と瑛一は惠に背中を向けた。  そうでもしなければ、また奇妙な熱に侵される。  夜は、しんしんと更けていった。

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