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第三章・7
「その時は、その時か」
とろとろと眠りと現実のはざまを行き来しながら、惠はそんな瑛一の声を聞いた。
兄さんが、僕に触れてきた。
兄さんに、イかされちゃった。
その次、の段階があるのだろうか。
夢で見た、ぎらついた目の兄さん。
僕を頭から足の先まで、食べちゃおうとしていた兄さん。
後膣が、きゅんと疼いた。
「その時は、その時だね」
自分の声をどこか遠くで聞きながら、惠はうとうとと眠りについた。
その日、朝のうちに惠は、誰からも心配された。
使用人からは、何かあられましたか?
執事からは、眠れなかったのですか?
運転手からは、心配事でも?
そう尋ねられるほど、ひどい顔をしていた。
「理由は解かってる」
その時は、その時だね
自分でもそんな風に先延ばしにしてみたが、いざ目が覚めてハッキリした頭で考えるとそうではないのだ。
今回のように、兄さんが手を伸ばして来たら、そのままなし崩しにずるずると?
そんなの、イヤだ。
兄さんが求めて来たから抱かれたんだ、なんて逃げたくはない。
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