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第三章・8
「僕は兄さんが好きなんだ」
でなければ、あんな夢を見たりしないだろう。
性器を大人しく弄られるままにしないだろう。
逃げようと思えば、逃げられたのだ。
兄に弄られる事を選んだのだ。
「だって、気持ち悦かったし」
誰に向けるともなく、頬を膨らませた。
いや、ここにはいない瑛一に向けて、頬を膨らませた。
あんなに巧いなんて。
他の誰かにも、やってあげてるの?
そう考えるともう、居ても立ってもいられなくなってくる。
瑛一が、他の誰かの元へと行ってしまいそうな焦燥感に駆られる。
「兄さん、今日も僕の部屋へ来るかな」
そうしたら、思いきって胸の内を打ち明けよう。
そう心に決めて、そわそわと一日を過ごした。
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