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第三章・9
瑛一が惠の部屋を再び訪れたのは、2日後のことだった。
「もう、来てくれないかと思った」
「なぜだ?」
だって、と惠はかすかに耳を熱くした。
「僕にあんなことした後だから」
あんな事、と言って瑛一は苦笑いをした。
「またして欲しいなら、やってやるぞ」
瑛一は軽い冗談でそう言ったのだが、惠の返事は冗談に聞こえなかった。
「うん、またやって。そして……」
僕のこと、抱いて。
耳を疑ったが、惠は畳み掛けてきた。
「兄さん、僕の事好き?」
「好きと言えば好きだが、そうでないと言えば……」
「そういうの要らないから。好き? 嫌い?」
惠、と瑛一は弟をたしなめようとしたが、彼は大人しくしてはいなかった。
きらきら光る挑戦的な目で、こちらを見ている。
瑛一はしかたなく、シンプルに答えた。
「好きだ」
「だったら、僕の事抱いて。今夜ここで」
「本気か?」
「本気」
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