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第四章 溶けて、一つになってゆく。
ドライヤーの音が、かすかに聞こえる。
瑛一は手櫛で髪を後ろに流すと、脱衣所を出た。
僕の事抱いて。今夜ここで
惠の言葉が脳裏をよぎった。
まったく過激な願い事をしてくれたものだ。
抱くのか? 惠を。
もう一度、自分に問いかける。
答えは相変わらずのグレーゾーンだ。
ただ、腹はくくっていた。
「途中であいつの方からやめる、と言い出すかもしれないしな」
泣かれるかもしれない、とも思った。
その時は途中でやめてやろう。
それくらいの漠然とした気持ちで、瑛一は風呂から上がった。
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