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第四章・2

「あ、兄さん。ちょっと待ってて。もうすぐ済むから」  ドライヤーで髪を乾かす惠の声は、明るい。  わくわくと、ご機嫌な様子だ。  どさり、と瑛一はベッドに腰掛けた。 「いいから、来い」 「でも」 「早くしないと、寝てしまうぞ」  兄に寝られては困るので、惠は急いでドライヤーを切った。  小走りで駆けてきて、瑛一の隣に腰掛けた。 「ふふ」 「余裕だな」  兄さんキスして、と惠は瞼を閉じた。  やけに積極的な弟だ。  柄にもなく、瑛一の胸は高鳴った。  キス、ならやったことがある。  兄は弟に口づけた。 「ん……、兄さ……、ん」  ちゅくちゅくと鳴る水音の合間に、惠の甘い声が聞こえる。

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