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第四章・4

「いいんだな」  パジャマを脱がせた弟を組み敷きながら、瑛一は念を押した。 「来て」  惠の眼は真剣だ。 「もう少し、いい表情をしろ」  今からセックスするというのに、これではまるで心中でもしそうな目つきだ。  軽く笑うと、瑛一は惠の首筋に唇を這わせた。  羽根のように触れた後、強く吸う。舌も使って愛撫した。 「あ……」  思わず漏れた声に、惠は赤面した。  恥ずかしい。  そうするうちに、瑛一は胸元にキスを落としている。  その濡れた髪が素肌に触れ、惠はぞくりと震えた。 「ま、待って。待って、兄さん」 「どうした」  降参か? とでも言いたげな兄の瞳がこちらを見る。  そうじゃない。そうじゃないけど。 「兄さん、僕の事、好き?」 「何をいまさら」  お願い、と惠は鼻にかかった声でねだった。

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