56 / 163
第四章・4
「いいんだな」
パジャマを脱がせた弟を組み敷きながら、瑛一は念を押した。
「来て」
惠の眼は真剣だ。
「もう少し、いい表情をしろ」
今からセックスするというのに、これではまるで心中でもしそうな目つきだ。
軽く笑うと、瑛一は惠の首筋に唇を這わせた。
羽根のように触れた後、強く吸う。舌も使って愛撫した。
「あ……」
思わず漏れた声に、惠は赤面した。
恥ずかしい。
そうするうちに、瑛一は胸元にキスを落としている。
その濡れた髪が素肌に触れ、惠はぞくりと震えた。
「ま、待って。待って、兄さん」
「どうした」
降参か? とでも言いたげな兄の瞳がこちらを見る。
そうじゃない。そうじゃないけど。
「兄さん、僕の事、好き?」
「何をいまさら」
お願い、と惠は鼻にかかった声でねだった。
ともだちにシェアしよう!