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第四章・5

 そうか、とそこで瑛一は腑に落ちた。  確か以前、キスをする時も目を閉じろ、などと言っていたっけ、こいつは。  ようするに、雰囲気が欲しいんだろう。  映画のラブシーンであるような、甘い雰囲気が。  そうでなくても、こいつにとっては初めての夜だ、と少し急いていた自分を瑛一は反省した。 「好きだ」 「僕も、兄さんの事が大好き」 「好きだ、惠」  そう囁きながら、瑛一は惠の桃色の乳首を緩く吸った。 「ぅんッ!」  感度が良いな、と思いながら、瑛一は惠の小さな乳首を責め立てた。  唇に挟んでこりこりと転がすと、ささやかながら存在を増してくる。  そこを食み、舌で舐め上げ音を立てて吸った。 「ん、ぅうんッ! はぁ、はあッ!」 「我慢しないで声を出せ。それから」  手の位置はここだ、と、瑛一はシーツを掴みしめた惠の手をほどき、自分の背に触れさせた。  ちゅぷ、くちゃ。ぴちゃ、つぷん。  瑛一の立てる水音に、快感が上乗せされる。  胸を弄られるだけで、惠は中心が脈打つ心地を感じていた。 「はぁッ……や、あぁ。あッ、あッ、あぁん……ッ」

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