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第四章・6
瑛一は、背中に回された惠の手先が、どんどんきつく爪立ってくる気配を覚えた。
(弟に爪を立てられるとはな)
倒錯した思いはいまだ抜け切れないが、こいつを悦くしてやろうという気持ちは充分にあったので、瑛一は片手を惠の性器に伸ばした。
「あ! ダメッ!」
「いいから」
瑛一は掌で惠を軽く扱いた。
それだけでもう惠の腰はがくがくと引きつり、果ててしまった。
「あ、はぁ、はぁ。うぅ……」
いったん惠から離れると、瑛一はサイドテーブルから水をよこした。
「少し休め」
受け取った水はありがたく飲んだ惠だったが、これで興が覚めるのではないか、と不安になった。
「兄さん、続けて」
「いいから少し休め」
苦笑いして、弟の髪をくしゃりと嬲った瑛一だ。
張り切るのはいいが、これでは心臓が破裂して死んでしまうだろう。
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