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第四章・7

「ちゃんと俺はお前の事が好きだから、安心して休め」  じんじんと火照る体を持て余しながら、惠は赤くなった。  すっかり子ども扱いされている。  それならそれで、甘えてしまおう。 「兄さん、髪が濡れてる。乾かしてあげるよ」 「じゃあ、頼むか」  ドライヤーを使う間に惠の身体も心も余裕を取り戻し、瑛一もまた急いた気持ちを落ち着かせた。  第2ラウンドといくか、と瑛一は惠を再びベッドに横たえた。 「ね、兄さん。キスしてよ」 「またキスか。お前はキスが好きだな」  それもあるが、キスならさほど緊張せずに受け入れられる、という気持ちが惠にはあった。  これまで何度もやったことがあるし。 (キスした時点で、兄弟の壁は越えてるよ、兄さん)  瞼を閉じ、甘いキスをむさぼりながら、惠はそんなことを考えていた。 (僕は兄さんが好き。愛してる。だから)  だから、身も心も一つになりたいのだ。  そうすることで、瑛一の中に深く深く刻み込まれたいのだ。

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