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第四章・10

「ホントに初めてなんだな」 「当たり前でしょう!」  兄は一体、僕の体に何をしたのか。  ただ解かるのは、自分の体内にはどうしようもなく感じる部分があるということだ。  水を飲み、そこは前立腺という部位だと瑛一に教えてもらった惠だった。 「男性にだけ、あるの?」 「そうらしい」 「じゃあ、兄さんにも?」 「あるだろうな」  そしたら、と惠は自分の指をじっと見た。 「兄さんにも、してあげようか?」 「いらんことを考えるな」  人の嫌がることほど、してみたくなるものだ。  惠はふざけて、瑛一の後ろに回り込もうとやっきになった。 「やめないか!」 「兄さんに、カンチョーしてあげる!」  ベッドの上で、ばたんばたんと暴れて、やがて息が切れて二人でもたれ合った。  そして抱き合い、どちらからともなくキスをした。  静かな、温かなキス。  惠はそれで瑛一の思いやりを感じたし、瑛一はそれで惠の落ち着きを感じていた。 (いい具合にリラックスしてるな) 「惠、腹這いに寝ろ」 「こう?」

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