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第四章・12
なんだ、こんなものか。
惠は安堵と余裕を感じていた。
瑛一は惠の浅いところを、行ったり来たりしているだけなのだ。
痛みもないし、苦しくもない。
「ねぇ、兄さ……」
「そろそろ行くぞ」
え、と返事をする間もなく、瑛一が深く挿入って来た。
ぐ、ぐ、ぐううッ、と奥へ。
さらに奥へと挿入って来る。
「あ! う、くッ! うッう!」
痛い、苦しい、涙が出る。
しかし、それと同時に惠は自分の体内に、瑛一という存在をしっかり受け止めていた。
兄さんが。
兄さんが、僕の内に。
奥まで挿れてしまうと、瑛一は止まった。
「どうする。苦しいなら、今日はここまでに」
「ヤだ。苦しくなんかないから、最後まで」
そう言う惠の呼吸は、やけに乱れている。
(大丈夫か?)
惠の体を案じながら、瑛一は腰を退いた。
内壁が逆らい、甘く絡みついてくる。
ぞくぞくした。
(大した名器だ)
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