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第五章 そうだ。兄さんの、今の恋人は僕なんだ。

『あ、そうそう。アイス食べに行こうよ、兄さん』  アイス、か。  瑛一は惠を待ちながら、苦笑いしていた。  いくら照れ隠しとはいえ、アイスクリームをネタにするとは。 「惠も、まだまだ……」  子どもだ、と口にしかけて、つぐんだ。  昨夜は、その子どものはずの惠を抱いたではないか。  子どもどころか、俺を夢中にさせる魅力を振り零していたではないか、彼は。  情事の翌日、照れ隠しにアイスを食べに誘う惠。  少し、安堵していた。  血の通った兄弟同士で愛し合う。  そんな一線を越えてしまっても、惠は相変わらず惠だ。その性格に、妙な歪みは見られない。 『エスプレッソモカ、っていうフレーバーなら、兄さんでも気に入ると思うんだ』  甘いものが苦手な兄を気遣い、必死でフォローする姿も健気だ。  行こうじゃないか。アイスを食いに。  もう一度、今度は穏やかに微笑むと、瑛一は惠を待った。

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