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第五章・2
「でも兄さん、ホントは少し呆れてるかも」
服を着替えながら、惠は呟いた。
昨夜、僕は兄さんのものになった。
兄さんは、僕のものになった。
その翌日、よりによってアイスを食べに誘うなんて!
あまりにも子どもっぽかった、と今では少し後悔していた。
よく考えると、初デートなのだ。もっと素敵な提案をしてもよかったのに。
「くよくよ考えても、仕方ない!」
ぱん、と両手で頬を叩くと、惠は部屋を飛び出した。
兄さんが、待ってる。
この先に、兄さんが僕を待っていてくれるんだ。
その一心で、走った。
「遅くなって、ごめんなさ……」
惠は藤堂邸の裏門で待つ瑛一を見て、思わず言葉を飲んでいた。
兄は、バイクにまたがって待っていたのだ!
黒いつややかなボディは大きく、単車に詳しくない惠にすらすぐに解かる。
凄い排気量。凄いスピード。そして……。
(凄く高価、だよね)
こんな見事なバイクを、兄はどうやって手に入れたのか。
いろんな思いを渦巻かせていた惠は、瑛一の声に我に返った。
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