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第五章・14

「兄さん、ダメッ! また、出ちゃうぅッ!」  惠の悲鳴に、我に返った。 「安心しろ。俺ももうすぐ……」  どくん、と下腹が打った。その瞬間、瑛一は惠の体内へとなだれ込んだ。  後ろから抱きしめ、兄弟はぴったりと重なった。  引き攣り、痙攣しているところを見ると、惠もほとんど同時に達したらしい。  手のひらでその体を撫でさすっていると、やがて惠は脱力した。  ぐったりとベッドに倒れ込む弟について、兄もまた横になった。 「あぁ……」  薄っすらと唇を開き、惠はまだ夢見心地の様子だ。  はぁはぁと甘い吐息が瑛一の胸にかかり、くすぐったさが愛しさに変わる。 「悦かったか?」 「……最高」  これまた予想外の返事に、瑛一は面食らった。  その表情に、惠は満足げな笑顔を向けた。 「こいつめ」  瑛一は、惠の鼻をつまんだ。  それは今まで繰り返してきた、兄と弟のよくするふざけ合いそのもので、二人は一瞬だけひやりとした。  血のつながった兄弟で、何という過ちを。  誰かに、そう咎められているかのようで、震えた。

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