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第五章・16
ヘルメット越しにも解かる、やけに眩しい光。
バイクから飛び降り、惠は歓声を上げていた。
「わぁ!」
ホテルから出て、瑛一は惠を連れて海へ来ていた。
「久しぶりだな、海!」
防波堤を乗り越え、テトラポットの上に立つ惠は子どものようにはしゃいでいる。
とても先程まで、熟れた情念を以って瑛一に抱かれていた少年とは思えない。
「さっき、窓から海を見て喜んでただろう」
「うん。ありがとう、兄さん。嬉しい!」
バイクで海へ来るなんて、デートの王道みたいだ!
そんな気持ちではしゃぎながら海を眺めていた惠だったが、隣に瑛一が来た頃には、ふと淋しい思いも味わっていた。
こんな風に、他の女の人も海へ連れて来てたんだろうな。
だが、惠の思いは良い形で裏切られた。
「バイクで海へ来るなんて、初めてだ」
「本当?」
「ああ。後ろに誰かを乗せた事もないしな」
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