96 / 163
第六章・5
12月24日、夜。
藤堂家のパーティーを無事終えて、惠は自分の部屋で瑛一を待っていた。
「兄さん、遅いな」
腹八分目で抑えておけ、って言ってたけど、お土産にタコ焼きでも買ってきてくれるのかな?
そんなことを考えていると、窓をコツコツと叩く音がした。
「兄さん、ちゃんと玄関から出入りするように、っていつも言ってるのに!」
「家人に会うと面倒だからな」
それに、と瑛一はにやりと笑った。
「今夜の俺は、誘拐犯だ」
「誘拐犯?」
「惠、おまえをこれから誘拐する」
そう言って、瑛一は窓を大きく開け放った。
冷たい風と共に、粉雪が舞い込んでくる。
「じゃあ、誘拐されちゃおうかな」
「そうしろ」
二人は窓から外へ出て、屋敷の庭園を並んで歩いた。
(また、バイクの後ろに乗せてくれるのかな)
そう期待していた惠だったが、今回はさらに驚く展開だった。
屋敷の外には、自動車が横づけされていたのだ!
ともだちにシェアしよう!