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第六章・10

「大好きだよ、兄さん」  何をいまさら、と瑛一は照れている。 「兄さん、顔が赤い。もうワインはやめた方がいいよ」  赤いのは、酒のせいだけじゃないんだがな。  俺も好きだ、とは素直に言えない瑛一だ。  ただ、黙ってワインに栓をした。  ほどよく腹も満ちている。  ほどよく酔いも廻っている。 「では、そろそろ別の料理をいただく用意をするか」 「別の料理? まだあるの?」  僕はもうお腹がいっぱいなのに、とこぼす惠が可愛い。  別の料理というのはな、惠。  別の料理というのは……。

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