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第六章・13

 さほど性欲は強くない惠なので、自分で処理することは滅多にない。  あるとすれば、瑛一の訪問がご無沙汰な時だけだ。  兄の姿を、その手癖を想いながら自慰に耽る。  目を閉じ、兄さんにしてもらっているんだ、と妄想に耽る。 (でも、そんな事言えるわけないじゃない!)  意地悪な瑛一の問いは幸いそれ以上続かず、ただ惠の体を優しく可愛がる。  今日の愛撫は、自慰ではない。  正真正銘の、瑛一からの愛なのだ。  そのことが、惠をひどく昂らせた。 「もうダメ。出ちゃう!」  惠の体が大きく引き攣り、瑛一に向けて温かな精を飛ばした。 「んあぁ、あ。はぁ、はぁ、ふぅ……」 「もう、終わりか?」 「ヤだ。もっと。もっとしたい。もっと来て、兄さん」  息を荒げながら、惠は瑛一におねだりしていた。

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