108 / 163
第六章・17
「やっぱり兄さんは、サンタクロースだったんだ!」
少し人相の悪い、照れ屋のサンタさん。
素敵な、イヴだった。
高級車で、夜景のきれいなホテルの部屋に連れて行ってもらって。
美味しいお料理食べて、ちょっぴり背伸びしてワインを舐めて。
それから……、あんなにいっぱい愛してもらって!
惠の耳は、熱く火照った。
ニット帽のふわふわとした肌触りが、兄の手のひらのようだった。
優しく髪を、撫でてもらっているようだ。
「どうしよう。今から、来年のクリスマスが楽しみになっちゃった」
明るい日が昇り、窓の外の雪化粧はもうほとんど溶けている。
それでも溶け残った雪の上には、サンタクロースの足跡が残されていた。
少し人相の悪い、照れ屋のサンタの足跡が残されていた。
ともだちにシェアしよう!