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第七章 兄さんは、いつも初めてを運んでくれる。
朝の教室。
生徒たちは、そわそわと落ち着きをなくし盛り上がっていた。
今日から、教育実習生がこのクラスへやってくる。
どんな人物なのか、興味津々なのだ。
美人の可愛い人だといいな。
イケメンで男前の人だといいな。
そんな話題でいっぱいの中、惠もまた少し気持ちが湧いていた。
どんな人だろう。
優しい人だといいな。そして少し、ワイルドで……。
そこまで考え、は、と気づいた。
無意識のうちに、兄・瑛一の姿を思い浮かべていたのだ。
(こんな時にまで、兄さんの事を思っちゃうなんて)
惠は改めて、自分の心の中をいっぱいに占めている瑛一の存在に気づかされた。
そうこうしているうちに、ホームルームの時間だ。
担任の南先生が、実習生を伴って教室に入ってきた。
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