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第七章・2

「皆さんに紹介します。今日から一か月、このクラスで教育実習を行う先生です」 「藤堂 瑛一です。よろしく」  惠は思わず立ち上がっていた。 「に!」  ……いさん、と続く言葉は、必死で飲み込んだ。 (兄さん!? 何でここに!? 教育実習生、って、兄さんちゃんと大学に通ってたの!?)  口をぱくぱくさせて目を白黒させる惠をよそに、瑛一は素知らぬふりをしている。 「藤堂くん、どうしたの?」  急に立ち上がった惠に、南が声をかける。 「藤堂 惠は、私の弟なんです」 「あら、そうなの!?」  教師だけでなく、教室中が驚いた。  そして、惠も。 (兄さん、そんなにペロッと暴露してもいいの!?)  後は、何事もなかったかのように、教室の後ろへパイプ椅子を持って下がる瑛一だ。 (兄さんから、いっつも見られてるなんて)  嬉しい?  やりにくい?  多分、どっちもだ。

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