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第七章・3
前を向いていても、背中がむず痒い。
兄さんの視線を、感じるから。
それでも、少し温かな視線に思われるのはなぜだろう。
(兄さんが、見守ってくれてるからだよね)
そう考えると、これからの一か月が楽しみでたまらなくなってきた。
「では、この問題を……」
「はい!」
張り切って、手を挙げた。
兄さんに、いいところ見せたいな。
そんな気持ちで、黒板に向かっていた。
休み時間には、瑛一は一部の積極的な生徒たちに囲まれていた。
ひとつ後ろの輪の中に、惠もいる。
「藤堂くん、前に行けば? お兄さんなんでしょ?」
「う、うん。僕はここでいいよ」
本当は、真っ先に瑛一の元へ。一番近くにいたい惠だ。
質問攻めにあっている、瑛一。
何と答えているかが、気になる。
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