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第七章・4
「藤堂先生は、何歳なんですかぁ?」
「20歳だ」
「嘘! 落ち着いてる!」
「先生、一か月の教育実習は、確か大学3年生か4年生になってからなんじゃ……」
「飛び級した」
「凄い! 優秀~!」
「先生、恋人とかいますか!?」
ぴくん、と惠は耳を澄ました。
「いる」
即答だった。
きゃあきゃあと黄色い声が上がり、教室は騒然となった。
(兄さん、その恋人って僕だよね)
嘘やごまかしでなく、潔い瑛一の返事に、惠は気をよくしていた。
そこへ、後ろから背中をつつかれた。
「藤堂くん」
「何?」
「先生の恋人って、どんな人? 藤堂くん、知ってる?」
「え、いや。誰だろう、知らないよ」
弟にも紹介してないなんて、と友達は複雑な表情だ。
惠は、そっと瑛一を囲む輪の中から抜け出した。
まさか、その恋人は僕です、とは口が裂けても言えないことだ。
冷汗をかきながら、席に戻った。
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