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第七章・6

「もう! どうして教えてくれなかったの!」  帰宅後、惠は笑顔で瑛一にうきうきとした声をかけていた。 「驚かせてやろうと思ってな」  ホントに驚いたよ、とコーヒーの入ったマグを瑛一に渡す。 「ちゃんと大学に通ってたんだね」 「俺は元々勉強が好きだぞ? 藤堂家の人間にも勧められたしな」  実習のために半年やそこらで単位をかき集めるのは大変だった、と瑛一は首と肩を回した。 「実習が終わったら、次は法学部、理学部、工学部……、とにかくほとんどの学部を一周しなきゃならない」 「兄さん、大丈夫? 過労死しない?」  そんな柔な人間じゃない、と瑛一は笑ったが、次には渋い顔になった。 「ゆくゆくは藤堂家の事業の一部をまかされるはずだ。そのために、英才教育を受けさせてる気なんだろう」 「兄さん」  お前だって、一流高校に編入させられたじゃないか、と瑛一はコーヒーを一口飲んだ。

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