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第七章・12
「今日は兄さんを、僕の部活に招待するよ」
「お前、部活なんかやってたのか」
放課後、惠は勤務の終わった瑛一を連れて校舎の離れへ向かっていた。
「うん。茶道部へ入ってるんだ」
「お茶か」
藤堂家の人間になると、海外の要人と会う機会も多い。
そうなると、日本の伝統文化・茶道について尋ねられることがある。
「だから、一通りそういう日本文化を身に付ける必要がある、って勧められたんだ」
「なるほどな」
離れには、周囲から切り取られたように侘びた景色が広がっていた。
緑の芝生に、揺れる柳。
静かな池に、石灯篭。
「本格的だな」
「お金持ち学校だからね、うちは」
幼稚園からエスカレーター式で大学まで一直線の、お嬢様・お坊ちゃま学校だ。
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