120 / 163

第七章・12

「今日は兄さんを、僕の部活に招待するよ」 「お前、部活なんかやってたのか」  放課後、惠は勤務の終わった瑛一を連れて校舎の離れへ向かっていた。 「うん。茶道部へ入ってるんだ」 「お茶か」  藤堂家の人間になると、海外の要人と会う機会も多い。  そうなると、日本の伝統文化・茶道について尋ねられることがある。 「だから、一通りそういう日本文化を身に付ける必要がある、って勧められたんだ」 「なるほどな」  離れには、周囲から切り取られたように侘びた景色が広がっていた。  緑の芝生に、揺れる柳。  静かな池に、石灯篭。 「本格的だな」 「お金持ち学校だからね、うちは」  幼稚園からエスカレーター式で大学まで一直線の、お嬢様・お坊ちゃま学校だ。

ともだちにシェアしよう!