122 / 163
第七章・14
「あれ? 誰もいない」
部員が多いから、絶対誰かは居ると思ったのに、と惠は眼をぱちぱちさせたが、その後すぐに、手をパチンと叩いた。
「兄さん、ごめん! 今日、お茶の先生がお留守だから、部活は休みだったんだ!」
「そうか」
「そうか、って。残念じゃないの?」
「いや、その方がゆっくりできそうだと思ってな」
瑛一はそう言うなり、八畳の上にごろんと寝転がった。
「お行儀が悪いよ、兄さん!」
「まぁ、こういう茶室の使い方もあるという事だ。どうだ? お前も」
のんびりと瞼を閉じる瑛一の姿に、惠はくすりと笑った。
じゃあ、僕も。と言うと、兄の隣に横になる。
「あ~あ。お茶の先生が見たら、真っ赤になって怒るだろうな」
「怒りたい奴には、怒らせておけ」
惠も瑛一に習って、瞼を閉じた。
ともだちにシェアしよう!