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第七章・15
静かだ。
木々を触る、風の音が聞こえる。
天高く鳴く、小鳥の声が聞こえる。
(あぁ、すごくリラックスできる)
藤堂家のため、この高校へ入った僕。
勉強をさせてもらえるのは、ありがたかった。
友達もたくさんできたし、先生も皆いい人たちばかり。
それでも、今このひとときほど寛いだことはなかった。
(兄さんが、隣にいるからだよね)
全身の力を抜いて、リラックスしている惠の唇に、柔らかく温かな感触がもたらされた。
「ッ……」
ぴくん、とかすかに動いたが、そのまま眼を閉じている惠。
唇を合わせたまま、瑛一はその髪をかき上げ撫でた。
さらさらと、畳の上にこぼれる柔らかな惠の髪。
静かな茶室に、キスの立てる水音が響く。
瑛一が惠の制服をほどく、衣擦れの音が響く。
首筋に舌を這わせながら、瑛一は惠に声をかけた。
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