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第七章・21

「惠、弁当を一緒に食わないか?」  昼休み、瑛一が突然惠の席へやって来た。 「え!?」 「ふふふ、驚いたろう。俺ばかり学校関係で、お前に驚かされてばかりと思うなよ」  まさか、兄さんがランチを誘ってくるなんて!  まさか、兄さんと学校でお昼を食べるなんて! 「何だ、食わないのか」 「食べる! 食べるよ、兄さん!」  でもまだ、変化球があるんだからね! 「せっかくだから、外の芝生で食べようよ」 「ん? そうだな」  まさか、青い芝生の上で弁当を広げるとは、予想していなかった瑛一だ。 (やはり学校では、惠の方が一枚上手というわけか)  惠に連れられ、植物園に続く芝生広場で包みを開けた。 「兄さん、コンビニ弁当なの?」 「屋敷の人間に作らせるのは、気が引けてな」 「じゃあ、明日から僕が兄さんの分も作ってあげるよ。お弁当」 「いいのか?」 「お願い、作らせて」

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