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第八章・4

 今、一番愛しているのは、惠だ。  それが、正直な気持ちだ。  だが彼は、血のつながった弟。  結婚が許されるはずもない。 (だったら、せめて惠に似た女性と……) 「兄さん!」 「おぅ、驚いた」 「ちゃんと食べてる? あっちに、お寿司があったよ!」  職人さんが注文を聞いて、その場で握ってくれるという寿司の話を、惠は無邪気に報告してくる。 「やっぱりお前は可愛いな」 「な、何? 急に」  いつかは離れなくてはならない運命の、愛する弟。  瑛一は、人目もはばからず彼を抱きしめたくなった。  離れたくない。  放したくない。 「惠、バルコニーへ行こうか」 「お寿司はいいの?」 「すぐ、済む」  瑛一は惠を伴って、人気のないバルコニーへ移った。

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