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第八章・15

 前戯もそこそこに、瑛一は惠と一つになった。  貪るように腰を穿ち、弟を泣かせた。 「あぁ、あ! はぁ、はぁ、あぁ、ああッ!」 「惠……ッ」  逃げている。  逃避しているんだ、俺は。 「あ、ダメ! 出ちゃうぅ!」  ソファを汚さないために、瑛一は自分の上着をさっと脱いで惠に掛けた。 「あぁ、ああぁ!」  びくびくと痙攣しながら精を吐く惠を、休ませることもなく穿ち続けた。 「に、いさんッ! あ、あぁんんッ!」 「惠、兄さんと呼ぶな」  え……?  何で?  じゃあ、何て呼べばいいのかな……? 「瑛一、と。名前で呼んでくれないか」 「そ、んな」  こんなやりとりをしながらも、兄は弟を責め立てる。  二度目の波が、惠を襲ってきた。 「あ、はぁ。ヤだ、ま、た、来るぅう!」  頼む、惠。  俺をもう、兄さんと呼ぶな。  そんな瑛一の念が通じたのか、惠はその名を呼びながら果てた。 「え、い、いち、さんッ! 瑛一さんンッ!」  その声に、瑛一も絶頂を迎えた。

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