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第九章・3

「でも、どうしてそんなに表情が暗いの?」 「ああ、それはな」  茉莉に、一対一でお付き合いして欲しい、と願い出た瑛一。  だが、予想外のリアクションが彼女から返ってきた。 「その前に、お前に会いたい、と言うんだ。惠」 「僕に?」 「正確には、俺とお前と三人で、だ」  なぜだろう。 「瑛一さん、何か心当たりある?」 「いや、全く」  女性というものは、時折こんな風に理解不能の要求を出してくるのかな、などと、その場は終わった。  今度の日曜日に、惠は瑛一と一緒に、茉莉に会う約束をしていた。  瑛一の去った自分の部屋で、惠は鏡を見た。  複雑な、表情。 「僕は瑛一さんを愛してる。瑛一さんも、僕を愛してくれてる」  その中に、割って入ろうとする鎌田 茉莉は、惠にとって忌むべき存在のはずだ。 「だけど、なぜか憎めない人なんだよなぁ」  以前、瑛一が見せてくれた彼女の写真。  タヌキみたい、と惠はその時言ったが、いい意味で愛嬌があるのだ。 「その上、気配り上手。良家の令嬢。はぁ……」  僕、勝ち目があるのかな。  不安な心地で、惠は日々を過ごした。

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