151 / 163
第九章・4
お久しぶりです、と茉莉は惠に挨拶した。
「以前、藤堂さまの晩餐会でお会いしました」
「あ、瑛一さんに料理を持って行った時に……」
瑛一の空腹を案じた、惠と茉莉。
皿に料理を盛って、彼の元へと現れた時に鉢合わせしたのだ。
「あの時は、本当に失礼いたしました。弟さんがいらっしゃるのに、出過ぎた真似を」
「いえ! 瑛一さんは結局、二皿平らげましたから!」
顔がタヌキでも、どんな意地悪を言われるかもしれない、と構えていた惠の心は、たちまちほぐれた。
そんなリラックスした表情の惠を見て安心した瑛一は、茉莉に声をかけた。
「今日はどうしますか? 茉莉さんに合わせますよ」
「では、わたくし遊園地へ行きたいのですが」
「賛成!」
元気な惠の声に、瑛一も茉理も顔をほころばせた。
「惠さんも賛成してくださいましたし、よろしいですか? 瑛一さん」
「はあ……」
瑛一にとって遊園地は、お子様向けのデートコースなのだが、三人の内二人が行きたがっているなら仕方がない。
瑛一の運転する車で、大きなテーマパークへと向かった。
ともだちにシェアしよう!