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第九章・5
ジェットコースターで目を回したり、ゴーカートで笑ったり。
フリーフォールで絶叫したり、トリックハウスで迷ったり。
遊園地も意外と楽しいものだ、と瑛一は考えを改めていた。
そしてそれは、おそらく隣に惠がいるからだ。
「お前と一緒だと、どこでも楽しいな」
「ありがと! でも……」
二人は、茉莉の考えが読めないでいた。
ジェットコースターで瑛一の隣に惠を座らせたのは、他ならぬ茉莉なのだ。
ゴーカートも二人乗りの車を兄弟に提供し、フリーフォールでも瑛一の隣を惠に譲った。
そして今、観覧車に三人は乗っている。
やはり兄弟が身を寄せ合って座り、茉莉はその向かい側の席にいる。
「そろそろ種明かしをしてくださいませんか?」
ゴンドラが動き出し、瑛一がとうとう降参した。
「種明かし?」
「なぜ、私と惠をいつも一緒にアトラクションに乗せるか、ですよ」
「実は観覧車に乗ったのは、そのことについて打ち明けようと考えたからですの」
ゴンドラは、密室だ。
他の誰にも、聞かれる心配がない。
「瑛一さん、そして、惠さん。お二人は、深く愛し合っておいでですね?」
茉莉の爆弾宣言に、二人の顔から血の気が引いた。
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