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第九章・12

 両腕で顔を隠し、薄く開いた唇だけをのぞかせている惠。  しかし、その口からは甘い吐息が、細い啼き声が漏れてくる。 「っく、あぁ。はぁ、あぁ、あ……」  全部しっかり挿れてしまった後、瑛一は惠の腕に手を伸ばした。 「手は、ここだと前に教えただろう」  惠の手を自分の背に回させ、勢いよく腰を退いた。 「あ! あぁあんッ!」  途端に力を込め、惠は瑛一の背に爪を立てた。  程よい痛みが、甘美だ。  瑛一は、ていねいに、リズミカルに抽挿した。 「あんッ! ヤだ、あ! はぁ、はぁ、はぁあッ!」 「惠、以前お前が言ったことを覚えているか?」 「……ッ、あ! な、何?」 「好き、と、愛してる、の違いだ」  ああ、瑛一さんが、まだ『兄さん』だった頃の話だ。  でも、どうして今? こんな時に?  確かあの時、僕は『愛してる』の方が深い気がする、って瑛一さんに言ったんだ。 「ハッキリ言っておく。俺は茉莉さんのことが好きだ」 「んぅ!?」 「だが、惠。お前のことは、愛している」 「あ、あぁ! あ、あ、瑛一さん……ッ!」  こらえきれずに、惠は瑛一の腹にまで精を飛ばした。

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