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第八章・14
時は過ぎ、4月。
無事にわたくしと瑛一さんは正式に婚約はしましたが、と言う茉理は、いたずらっぽい目をくるくるさせて鎌田邸の植物園へ二人の兄弟を招待した。
茉莉お嬢様の許しが無ければ、庭師すら入ることを許されない秘密の花園だ。
「それで私たちに、こんな格好をさせて一体何を企んでいらっしゃるんです?」
「瑛一さん、カッコいいよ!」
瑛一も惠も、純白のタキシードを身につけ、フォーマルをまとった茉莉の前に立っていた。
「今から、お二人の結婚式を挙げたいと思います!」
「け」
「結婚式!」
惠は、目をキラキラさせて瑛一を見上げている。
「やはり惠さんに、わたくしと瑛一さんの挙式をお見せするのは毒だと思いますの」
でも、こうやって先に結婚式を済ませておけば、気持ちに余裕ができるのではないか、と茉莉は言う。
「本当に、何から何まで……」
「ありがとう、茉莉さん。僕、嬉しいです」
「参列者がわたくしだけ、というところが申し訳ないのですが」
何をおっしゃいます、と瑛一は微笑んだ。
「最高で最大の理解者が、私たちを祝福してくださるんです。これ以上の喜びはありません」
では、と茉莉は二人の前で、厳かに誓いの言葉を求めてきた。
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