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「な、なんで真琴が……?」 「このイケメンお兄さんと同じもので。 ココアパウダーじゃなくておれもシナモンスティックがいいな」 「かしこまりました」  真琴は俺の戸惑いを無視し、店員に〝いつもの〟をオーダーした。  辺りの混雑具合を見回して「ふぅ」と溜め息を吐く真琴の横顔が、普段よりも落ち着いているように見えてさらに俺は困惑した。 「真琴、……っ」  体ごと真琴の方を向いている俺に対し、彼は真正面の観葉植物をジッと眺めている。 真琴にそれを嗜む趣味は無かったはずだ。  背凭れの無い丸椅子は、誰の背筋もピンとさせる。  真琴も例外ではなく、やけにシャキッとした風体でチラと俺に流し目を寄越した。 「怜様」 「…………っ?」 「スマホの充電お忘れっすか」 「あ、……いや、……」  違う、違うんだ。 充電が無くなって電源が落ちたわけじゃなく、俺が自発的に……って、真琴はそんなの気付いてるか。  俺の名前を泣き叫んでいた真琴があの後取った行動は、おそらくこの視線の通りで。  すべてにおいて、俺に弁解の余地は無い。 「まぁそんな事はどうでもいいんだけど。 怜様、カプチーノ飲んだら映画に行こうよ」 「はっ?」 「その後はゲーセン。 UFOキャッチャーしよ。 おれ欲しいぬいぐるみあるんだぁ。 怜様取って」 「え、えっ?」 「怜様って頭がいいからさ、ほら……あれ何だっけ。 掴むやつ」 「……アーム?」 「そう! アームの強弱見極めて、目標物をいかに効率良く少額でゲット出来るかって即座に計算するじゃん。 頭の中で」 「…………」  自身のこめかみに人差し指を向けた真琴を、唖然と見詰める。  映画……? ゲーセン……? 欲しいぬいぐるみをゲットしてくれ……?  真琴、何を言ってるの。  なぜそんなに平然としていられるんだ。  ゲットしてほしいぬいぐるみの画像を探している真琴は、スマホに向かって独り言を吐き、どこからどう見ても狼狽えていない。  明らかに俺の方が動揺している。 「いやいやいや、待って、……あの、由宇は?」 「由宇は来ないよ」 「え!?」 「映画なに観るー?」 「ちょっ、真琴! 俺は映画なんて気分じゃ……」 「怜様が言ったんでしょ」 「…………っ?」 「友達だよって」 「それは……っ」 「友達なら映画とかゲーセン行ってもいいじゃん。 気分じゃないって言われても困りますー。 連絡が取れなかったんだから怜様の気分なんて知りませーん。 スマホの充電は忘れないでくださーい」 「…………っ!」  ……ささやかな仕返しをされている気分だ。  真琴にそんなつもりが無くとも、そうされても仕方がないと思っている俺は反論なんか出来やしない。  俺を真正面から見てこない真琴の、いつになく落ち着いた様子が切ないと感じるのは当然の事。  運ばれてきたカプチーノをシナモンスティックでかき回しながら、困惑の渦中に居る俺に真琴は彼なりの見解を示した。 「おれ、友達活動がんばるよ」

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