4 / 6
第4話
大変な事になってしまった。
『ブーケ』改めイズミが自分の子供を妊娠しているらしいのだ。
イズミは精神的にさぞ不安だった事であろう。彼女は涙を溜めて震えていた。
彼女は身籠だのに走って飛び出て行った。
妊娠初期とはデリケートな時期である。
認知も不要のような事を口走っていたが、そうは問屋が卸さない。
お馬鹿なりにも恋一郎はイズミの事に対しては真面目なのだ。
居ても立っても居られなくなった恋一郎は直ぐに医院を閉めると、超高速で区役所に婚姻届けを貰いに行き、イズミのマンションに直行した。
玄関にある数字パネルの前に立ち、彼女の部屋番号を押したのであるが、何度押しても反応がない。
居留守を使われているのだものにべない。
ムッスリとした恋一郎は眼鏡を外して手をパネル板に翳した。
パチパチパチ…バチン…!
手を翳した部分に閃光が奔り、自動ドアが音もなく開く。
特殊能力だ。
恋一郎はマザコン気味でかなりお馬鹿だが、顔面偏差値だけはすこぶる高いので、時としてこのような力を発揮する事がある。
イズミが恋一郎の謎の説得により足を開いてしまった事も、男の娘であるイズミが妊娠した事も、このハンサムパワーが作用している。
実はそうなのだ。
思い返して欲しい。
酒が点で駄目な男が、酩酊状態でバキバキに勃つのか。
見落としがちだが、男で母乳が出る体質などそういない。
あれもこれも行き過ぎたハンサムの成せる業なのだ。
普段はダサい眼鏡でハンサムである事を隠して保護している。そう言った訳なのだ。
無論、世紀末を席巻する秘密結社やヒーロー団体から声が掛けてもらう機会はあったものの、その面接もお見合い同様にすっぽかしてしまう為、社会の役に立つ事はない。
ガラス張りのエレベーターに乗り込んだ恋一郎はいやに落ち着いていた。
無論、69階の7号室は鍵が掛かっていたが、恋一郎には無関係に等しい。
玄関を開けた恋一郎は己の部屋のように迷う事なく寝室に向かう。
ベッドにはイズミが転がっていた。
「イズミちゃん」
「恋ちゃん…っ!?…お仕事は?」
「仕事なんてどうだって良いんです」
「そんな身勝手な…」
「すみません。つい夢中になっちゃって」
「もう、恋ちゃんったら」
イズミは恥ずかしそうに背を丸めた。
「あんなに走って、お腹は大丈夫ですか?」
「ええ」
イズミは起き上がる事なく答える。
「顔見せて下さい」
「もう」
「安心させて下さい。お願いです」
「…はい」
無茶苦茶な状況だが、お互いに好き同士なので自然と甘い雰囲気になった。
恋一郎はベッドに乗りあがって正座をするとコホンと咳払いをした。
「イズミちゃん。あ、あのですね」
「…?」
「赤ちゃんは母乳を飲んでも一年と少しでしょう?」
「ええ」
「僕、イズミちゃんのおっぱいを飲む係になりたいんです」
おっぱいを飲む係。
「一生、おっぱいを飲む係にしては貰えませんか?」
幼い感じで恋一郎は首を傾げる。
「はい」
瞳を潤ませたイズミは半身を起き上がらせると素直に頷いた。
やはり好き同士なのだ。寄り添ってしまう。
「お腹の赤ちゃんに触らないように…ね?分かって下さい」
「はい…」
「良い子」
恋一郎は隙を突くようにしてイズミの口の端に唇を寄せた。
「あ」
「結婚しましょう」
恋一郎は親のクレカで用意していた指輪をイズミの薬指に填めた。
急いで婚姻届けを貰いに行った折に、ハンサムパワーで用意した代物のである。
無論、サイズはピッタリだ。
こう言う事に関してもハンサムパワーは作用する。
ハンサムパワー…─
不思議なハンサムパワーによって恋一郎の住む歌舞伎町は世紀末のバッドエナジーから護られているのである。
***
ピッタリと抱き合って暫くすると、恋一郎はイズミのスカートの中身に腕を差し入れた。
「そんな、いきなり」
イズミは例の如く恥ずかしがって、足の指に力を入れて腿をもじもじとした。
「駄目じゃない筈です…だって其処、ホラ」
「あ…」
さもありなん、其処はテントを張っている。
楽器のチューイングを合わせるような手付きでパンティの中に忍び込むと、潤んで粘り気を持つ秘部を摩った。
「い…やぁっ」
そんなつもりはないのに誘うような声がまろび出てしまう。
擦られるとグチュングチュンとあからさまな水音が響く。
抑えが効かずに、恥ずかしくなったイズミは内股を擦り寄せた。
「別に野蛮な事をしている訳ではないんですよ?」
そう言う訳じゃなくて慣れないのだ。
「分かっています」
唇を尖らせると、恋一郎は髪を掻き上げて「本当に?」等と悪戯猫の表情をして問う。
「分かっていますよ。自然に生まれる行為でしょう?」
恋一郎の整った頤を撫でてイズミは彼の眼の芯を見詰めた。
彼の瞳は膜が張っていて透き通っている。
透明で全く吸い込まれそうに美しい瞳だ。
「『自然に生まれる行為』…綺麗な言葉ですね」
恋一郎は自身の下半身を寛げると、イズミのソレと裏筋同士を抱擁させて抱き締めた。
「お腹の赤ちゃんに触らないように…だから、これで確かめて良いでしょう?」
子供が玩具を強請るような物言いで恋一郎は見上げて来た。暗に挿入しないと言いたいのであろう。
「ウ…ん」
向かい合ってお互いにM字開脚しているような体位で、イズミが甘く腰を揺すると疑似セックスのようになった。
「は、ぁ」
恋一郎は興奮してくれているようで、顔を歪めている。
彼の綺麗な顔が歪んでいるだけで、胸が熱くなって肉の中身がじんじんと腫れる感覚がある。
もしかするとブラジャーの中はまた入水しているのかも知れない。
「恋ちゃん」
イズミは朦朧とした。
「ンああッん!」
恋一郎に性器同士を束ねられて扱かれる。
大きな彼の手で操られて、潤んで雄汁をぽろぽろと零す二本の肉根はそう言うシステムの楽器のように見えた。
「イズミちゃんのクリトリス、凄い…」
耳元で低く囁かれるとぞくりと肌が粟立ってドッと濡れてしまう。
「れン、ちゃッン!」
イズミは日頃より女装した己の姿を鏡に映して自慰をし、性処理しているのであるが、自分でするより余程快楽美がある。
「これじゃまるで愛液がおしっこみたい」
「ぃ…ヤッぁ…っ」
不意に襲い掛かる射精感と必死に闘いながらも、今はただただ恋一郎に身を委ねるしか術を持ち合わせていない。
「イヤじゃありません。イズミちゃん、ほら、良く々ご覧なさい?びしょ濡れでしょう?」
恋一郎がイズミのスカートを大胆に捲ればブルンとイズミの性器が揺れた。
「ああっ言わないで」
目を離したいようであって、視線が縫い止められて離れない。
鈴口から溢れ出る透明のカウパー液が恋一郎の大きくエラの張った亀頭まで汚していた。
「こんな清楚な格好をして…」
「うっ」
「大きな大きなクリトリスです」
「…ぅ」
意地悪そうに言われると心が圧し潰されそうになる。マゾ気質が備わっているのかも知れない。
「君はエッチ向きの身体なんでしょうね」
確かに、エラの裏筋は青筋を立てて充血し、早急な劣情に愕然とする。
「…う、あ」
イズミは小さくどよめいて疼く尻を振った。
「ご、めんなさ…ィ!」
イズミが顔を覆いながら射精して愛汁を飛ばすと、恋一郎はそっと性器から手を放し、「ちゃんと綺麗ですよ」と囁いて髪を撫でてくれる。
「恋ちゃん…」
甘い接吻を交わす。
大好きなのだ。
彼だけは諦めたくない。
「僕の可愛いイズミちゃん…」
恋一郎はイズミのレース編みのカーディガンから手を侵入させて胸元を揉み始めた。
「ンああッ」
肉色の部分を掠められると、バネのように身が撓る。
男である以上、性には抗えない。
「イズミちゃん、好きです」
「僕も…好き」
「イズミちゃん」
恋一郎はイズミの股座を割ってそのまま覆い被さって来る。
インナーも下着も捲し上げられて胸元を露わにされても、揺れる乳などないのだが彼は夢中になってくれる。
「ゴメン、イズミちゃん…凄ぃ興奮して来た…我慢できないかも」
鼻息を荒くした恋一郎は肉芽にむしゃぶり付くとイズミの股をグッと閉じてその内腿でマス掻きし始めた。
「ひッ」
イズミは思わず悲鳴した。
「お腹、苦しくない?」
「は…い」
「良かった…ン、イズミちゃん…」
指同士を行き止まりまで握り合って、唇が降って来る。恐る恐る目を開けると、恋一郎はニッコリと微笑んだ。
「イズミちゃんの太腿、すべすべで気持ち良いです…」
カァっと耳まで火照る。
裏筋同士が擦れてジンジンと心地良い。快楽を昇ってゆくのにそう時間も掛からない。
「そんな動いたら、また、イ…く…ッ」
びりびりと性感に痺れる。乳首から母乳が勢い良く噴出すると射精が近いと言う妙な新定番が出来上がってしまった。
「あ…ッ!ぼ、僕もッ」
おっぱいのスプリンクラーにパラパラと濡れる彼は恍惚としている。
「あー…気持ち良過ぎ。イズミちゃぁ…ン!」
彼の引き締まった腹が鞴の如く早く動く。
彼の顔が接近して来て唇を合わせると、熱い体液がパタパタと腹に散った。
ともだちにシェアしよう!