しろが琅一の屹立に絡めていた指を外すと、綻んだしろの後蕾に、琅一がその先端をあてがった。 「……入るぞ」 　ひとつ大きく溜め息をついたあとで、しろの中へと侵入してきたそれは、長大であった。 「……っぁ……！」 　入念に琅一が準備してくれたおかげで、先端がめり込む違和感に息を詰めたものの、痛みはなかった。それでも異物感に呼吸が荒くなる。琅一はそんなしろの様子を見ていたが、やにわにぐぐっと腰を入れた。 「ぁ、ぁあぁぁっ、ぁ……！　入っちゃ……っ」 　琅一の怒張がめりめりと練り薬の助けを借りて入り込んでゆくのがわかった。下腹が苦しく迫り出すような感覚に、喘がずにいられない。が、丁寧に時間をかけてほぐされたせいか、かろうじて物凄い大きさのものに身体を刺し貫かれる圧迫感だけで済んでいた。 「は、ぁっ、は、入……っ？」 「入った。……大丈夫か？　しろ」 「ん。お腹の中、熱い……けど、へいき」 「お前の中、煮えたぎっているみたいだ……」 　結ばれたことに対する感慨が、琅一のくちづけや労わるように触れられる手から、じわりと実感を伴いあふれてくる。花弁症を患った当初は、琅一に本当の意味で触れられることなどかなわないのだと思っていた。なのに今、最も深い場所で琅一と繋がっていられる。しろは心に迫ってくるものに、はらはらと目尻から花びらの子どもが生まれるまま、笑んだ。 「しろ、痛みがあるのか？」 　琅一が不安げな声で尋ねてくる。 「ううん……。ちょっと、驚いただけ。これは、嬉し涙」 「本当か？　つらいならやめてもいいんだぞ？」 　臆病なまでに気遣ってくれる琅一に、心がぎゅっと満たされる。 「大丈夫。琅一こそ、平気か……？　おれの中、ちゃんと気持ちぃ……？　おれ、ちゃんと琅一に応えられてる……？」 　しろが言って、琅一の頬に手を伸ばすと、中の怒張がぐんと嵩を増したのがわかった。 「ぁ、ぇ……？」 「あまり無意識に煽るな」 「っ……？」 「こっちが暴走しそうなのを必死に堪えてるってのに、お前は。──動くぞ」 「んっ……、ぁあぁ──……っ！」 　しろの体内の奥深くまで埋められた陰茎が引き出されると、まるで内壁ごと持っていかれそうな快楽が生まれた。そうかと思うと引き出されたものが同じ速さで再び挿入される。 「っ……ぁん！」 　奥をとん、と突かれると、目の前に火花が散る。数度それを確認するようにされて、それからやにわに動きが変化した。 「ふっ」 　琅一が短く溜め息のように息を吐くと、ずるずると抜き出した怒張で、今度は筒の中程を叩くように抜き差しされた。 「ぁあっ、ぁ、ん、ぁぁ、んっ、ん……！」 　しろの中にある感じる場所を圧をかけられ擦られると、堪えられると思っていた声が無尽蔵に出てしまう。琅一は覚えたそこを重点的に刺激し、しろの内部を荒らし回った。一心に腰を振る琅一が、ひたむきに快楽を追う動きをはじめる。まるでしろの中にある宝物でも探るように、時折強く腰を回したり、角度を変えたりされて、しろは身の内から湧き上がり、迫り上がってくる快感に、あっという間に呑まれてしまった。 「はぁ、んっ、も、出、ちゃ……っ」 「かまわない。出せ。出しても終わりはしない」 　弱音をぶつけると、琅一がしろの屹立を掴んだ。裏筋を指の腹でなぞられた途端に、ぱたん、ぽとん、としろは決壊し、静かに白い雫を吐き出しはじめる。 「ぅぁ、あっ……！　あぁぁ──……っ！」 　瞬く間に絶頂を迎えたしろが、過ぎる悦楽から逃れようとして身体をくねらせる。 　しかし、繋がったままの局部からの刺激が全身へと渡り届くと、指先がその衝撃にさえ跳ねる気がして、もう駄目だった。 「ひぁ、んん……っ、は、弾け、る……っ！」 　無意識のうちに琅一の動きに合わせて腰を揺らしはじめたしろの媚態を、琅一はまるで眩しがるように睥睨した。 「弾けてしまえ、っ」 「ふぁ……っ！」 　琅一に促されると同時に、また押し出されるように結晶の雫がこぼれ落ちて、しろの身体の周囲へと散った。 「はぁ、ん、っ、ぁ、ぁあっ、ぃ、ぃっ……！　き、もち、ぃ……っ！」 　あとからあとから、渾々と湧き出す鮮やかな愉楽に、しろの涙は花びらの子どもになり、はらはらと流れる。覆いかぶさってきた琅一の背中に思わず爪を立て、滲んだ視界に愛しい人がいるのを確認すると、迫り上がってきた悦楽に背をしならせた。 　絶頂の長い波がくる。 　その最中、琅一がしろの耳元で言った。 「奥、入れるぞ」 「は……？　ん、んん、っ！　ぁあぁっ……！」 　刹那、これ以上入らないと思っていた琅一の雄芯が、しろの最奧に抉るようにして押し入ってきた。 「あ──ぁ、ぁぁ、っ──……！」 　今まで指で届くところより少し奧までしかきていなかった琅一が、腰をぎゅっと入れ直す。すると、しろが最奧だと思っていた壁の、さらに狭いところにぐっと怒張の先端が押し込まれ、今までとは比べものにならない悦楽をもたらした。 「は、ひっ……、ぁ──っ……！」 　達した瞬間の暴力的な眩さに、目を見開き、しろは背をしならせた。 　あまりの悦さに、視界に火花のようなものがぱちぱちと弾け、放り投げられた高みから降りてこられなくなる。 　琅一は本当の意味で、すべてをしろの中におさめてしまうと、そこから粗暴にすら思える動きで腰を振り出した。 「ひぃ、んっ、ふぁ、ぁあぁっ──……！」 　途中で、止まって、止まって、と口走った気がしたが、朦朧とした意識の隅で自分が何を言ったのか、全く知覚できていなかった。 「く……っ」 　やがて長く続いた律動と呼ぶには乱暴すぎる動きが、速度を緩めた刹那、ぎゅ、と両腕でしろは琅一に抱かれ、首筋を甘噛みされると、中が無意識のうちにうねるのがわかった。 「はっ、はぁっ、はぁ、っ、は、ぁっ」 　甘えるように身を寄せてくる琅一の腰に、気づいたら脚を絡めて腰を揺らしている。琅一がそれに応えるように、再び荒々しく、大きく動き出した。 「ぁ……んぁ、ぁあぁっ、あ！　あぁぁっ！」 　次第に激しく揺らされ、息も絶え絶えに互いにしがみつくと、琅一と視線が絡まる。貪り尽くそうとする琅一に、そのまま、と言われた気がして、しろはどうにか応えるべく、僅かに残る意識の欠片から、拙く言葉を紡いだ。 「ろ、いち……まだ……っ」 「っ、もう少し、だ」 　琅一の激しい息づかいが、もう長くはもたないことをしろに知らせていた。激しくなる抽挿に、悲鳴めいた声がひっきりなしに出る。しろはもう少しで達してしまいそうなのを、ぎりぎりのところで我慢し、踏みとどまっていた。 「んん、っ……！　琅一、っ、まだ、っ寂しかったり、苦しかったり、するか……っ？」 「……っ」 　しろが言葉にした途端、琅一の動きが絡み取られたかのように鈍った。今になってこんなことを持ち出すのは、反則かもしれない。けれど、大事なことだった。琅一が触れるたびに、花びらが生まれては、新しい快楽がしろを琅一の色に染め上げてゆく。たったそれだけのことが、泣きたくなるほど切なく、愛おしい行為だと、どんな言葉を用いれば琅一に伝わるだろうか。 「おれ、はっ、琅一が、好き、だ、から……ぁっ」 「──しろ、っ」 　言った琅一が、はっとするほど泣きそうに顔を崩し、そのあと破顔した。 「いや──、もう、寂しくも苦しくも、ない……」 　言った琅一の動きが、やがて容赦のないものになってゆく。もう限界だとしろが思った次の瞬間、琅一は喉の奧で呻いて、突然静止した。同時に身体がばらばらにされるような力強さで抱擁される。 　その時、奧にもったりとした熱い迸りを受け、しろは琅一とともに、幾度目になるかわからない絶頂に押し上げられていった──。