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 イキイキと弾んだ声で言葉のジャックナイフを突き刺していくズーズィに、頭蓋骨をガタガタ軋ませる。  刺し傷だらけのニューイは、どういうことかと顔を上げた。  情けなく眼窩からチマリと謎の液体を垂らすニューイ。  ニューイがこういう顔をするとズーズィは気分がいいので、ちゃんと説明してやる気になってくれる。  ズーズィは騙しが得意だ。こういうことは頼りになる。籠絡に長けていて、ニューイよりずっと人の感情を読むことが上手い。 「いーい?」 『う、うむ』 「アレくんとお前は、性格が違いすぎる。だからお互い理解できねーの」 『うむ……?』 「アレくんは、お前みたいになんでもかんでもポジティブに見てバカ正直に本人に言っちゃうマヌケなパピーちゃんじゃない、ってこーと」  ニューイは首を傾げた。  自分がアホだということはわかるが、それだと九蔵が嘘つきだということになる。  けれど九蔵は嘘つきじゃない。ニューイが思うに。むしろ思っていることをあまり言わないか、マイルドな言い方をするのでニューイは今困っている。 「それが真逆なんじゃん」 『んっ?』 「秘密主義ってことじゃなくてさ、自分都合の意見を言わないタイプ。もっと簡単に言うと甘え下手。自己表現下手?」 『む、難しい……! それでどうして九蔵は私がいるだけで疲れると言って私を避けるのか、わからないよ……!』  ズーズィの説明によりいっそう混乱したニューイは、カラコロと慌てた。  自分の知る九蔵とズーズィの話す九蔵に、噛み合わない部分がある。  九蔵は意見を言わないことはない。  ニューイをちゃんと叱っていた。叱る時もスジが通っている。  自分はよくて人はダメということもなく、言わなくても察して動け! なんて無茶な怒り方もしない。  だからこそニューイは九蔵に謝っていたし、九蔵が許してくれると話は解決したと思っていた。  しかし、それが違う?  イチルの生まれ変わりなのに、イチルとは違う部分がある? 『イチルと違うところとは……九蔵とは、いったいなんなんだい……?』  なぜそうなるのか。  なぜ違うのか。  ニューイはズーズィに尋ねる。  同じ魂でも違う可能性があると気がついた今、ニューイは九蔵という人間がどんな人間なのか、知りたくなった。  愛されたがりでも引っ込み思案でも傲慢でもないが、甘え下手でコミュニケーション嫌いで他人嫌い。  そんな九蔵は、なんだろう。  自分に理解、できるだろうか。  不安でカタピシと微かに軋むニューイに回答を求められたズーズィは、小馬鹿にしたように笑った。 「そんなの〝口下手な怖がり〟に、決まってんじゃん? バーカ」 『っ……』  ──口下手な、怖がり。  素直じゃないわけじゃないのに自分の意見をうまく伝えられなくて、敏感で察しがいいのに心が柔らかい人。  答えを知って、ニューイはパカンと口を開いてしばし唖然と静止した。  欠けたニューイの胸にストンと、理解できない九蔵の行動や言動の辻褄が落ちる。なるほど、なるほど。確かに──彼だ。  九蔵がなぜあんな態度をとりあんなことを言ったのか理解したニューイの様子に、ズーズィはプププとご機嫌に笑った。 「ま、トーゼンよねー」 『当然……』 「だってアレくんの魂はイチルとおんなじなんだから、根っこは当然、誰かを傷つけるような悪いコトなんかしようとも思わないキレーな人間っしょ?」  もちろん。九蔵は素敵な人間だ。  ニューイはコクリと頷く。 「そんなアレくんを、お前はダァイスキ。毎日一分一秒、ブレなく一直線に好き好き好き! でぇも? アレくんはお前のこと、そこまで好きじゃなーい」 『そっ、そうだ。私の片想い、だと、言ってしまった』 「そ。しまった(・・・・)! もうはっきり断ってる相手にそれでもいーってくらい好かれても、アレくんは同じように返せないじゃん? てーか、同レベルの愛情表現を求められるとスタンスが違うから苦痛なレベル? 性格真逆だもん。無理めー」 『っ』 「け! ど! 善人な根っこのアレくんは、貰ったものを返してあげらんないと罪悪感で自分をあんま好きじゃなくなんの。お前がイイコだから、イイコの望みを叶えてやらない自分のコトが最低最悪クソ人間に見えてんの」 『な……なんと……っ』  九蔵の心を想像したニューイは、自分がダメ押しをしてしまったことに気がついた。

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