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ズーズィは「はーアレくんもかなりめんどくさい。ちょーアホ。勝手やっててってカンジ」と雑に話を投げるが、ニューイはグルグルと考え込む。
九蔵は、他人といると疲れる自分のことをあまりよく思っていないのだ。
自分の気分という都合による希望を正義だと思っていないから、その意思を伝えられない……いや、伝えたくない。
九蔵のガードの硬さのわけ。
確かに警戒心もあるとは思う。
理由はわからないが、そう簡単に気を許さないのは間違いない。
けれどニューイが詰める距離を調整するのは、純粋な好意を原動力に動くニューイが、まっすぐで素直な男だったから。
『そういうことなんだから……本気で、俺の魂なんか、諦めたほうがいいと思うぜ』
本当は人のいい九蔵は、怯えた。
片想いだ、と悲しんだニューイに同じ愛情を返せないから、きっとこの先も悲しませることになる未来を思って怯えたのだ。
個々残 九蔵は、器用に一人で生きているようで本当は不器用な人間だった。
自分の言い分をじょうずに伝えられない口下手で、なるべく善人を傷つけたくない 平和主義の怖がり。
『ほ、ほうぁぁ……っ』
「そりゃいきなりヘビー級かまちょ食らったらキレるよにゃーん。てか考えたらわかるくね? 見るからに陰キャだし」
『つまり、つまりわ、私が自分から近づいて傷ついていたのか……!』
「はぁん!? ま、そうなんだけど……そう言うとまぁた極端な話になるでしょ~?」
ズーズィは素っ頓狂な声を上げ、不機嫌そうに否定した。
ニューイが情けないと機嫌が良くなるくせに、どうしてかニューイが貶められると機嫌を悪くするのだ。ズーズィもなかなかわからない。
『だって九蔵は悪くないだろう?』
「想いを返せないのに諦めの悪いニュっちを追い返す度胸もなくって勝手に苦しんだ上で逆ギレしたアレくんは、ボクのジョーシキではクソウザ面倒丸なんだよね~」
『いーや、九蔵はそれを自分でわかっているからすぐに謝ったじゃないか!』
「個人的に気に食わにゃいの〜」
『むぅ……個人的に九蔵のことを悪く言うなんて、いくらズーズィでも酷い』
「うるっせーなーこのクソウザガチ恋野郎! いちいちこんくらいで能力使おうとすんなし!」
ニューイは上げた手を無言で下げた。
理由もなく九蔵を悪く言うのなら、ニューイの前ではやめてほしいと睨む。
するとズーズィは「まぁ聞きなよ、脳ミソベイビーちゃん」と嫌味な声で躱す。
「最初の話、忘れてね?」
『むっ……』
「ニュっちはアレくんに好かれたいわけじゃん。となると、〝ニュっちはアレくんが大好きで、アレくんはニュっちがそこまで好きじゃない〟ってことを踏まえてぇ」
「踏まえて?」
「お前は好きな子に好かれるためにアレくんの残念ポイントを許容して、全力全身で合わせるべきってことなのよ」
「!」
「断じてお前が全部悪くはなーい。でも、惚れた弱みは最強な、のー。なら? お前がさっきした好きの押しつけなんて、反吐が出る悪手デス! ペッペッ!」
──そういうこと、か……!
ケタケタと高笑いが聞こえる中、ニューイは嫌味混じりの説明から真実をすくい上げ、目の前が晴れる気分になった。
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