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「な、ナスー……? ズーズィー……? なんかあったのか……?」  九蔵さんは果敢だ。  こちらに近づいてくる二人に声をかけると、二人は同時に九蔵を見た。 「クーにゃん」 「ココさん」 「おっふ」  どうしよう、目が怖い。  強面澄央には慣れているのに怖い。ズーズィなんて九蔵と同じ顔をしているのに怖い。目が怖い。  ニューイなんて九蔵の体にしがみついて薄っぺらい腹に顔を埋め、無言でガタガタとバイブレーションし始めた。直視してしまったらしい。  気持ちはわかる。  順応能力がサバイバー並みの九蔵じゃなきゃ逃げているレベルだ。 「あー……なんでそんな険悪なんだ?」 「「聞いてよ(ほしいス)」」 「はい」  ズズイと詰め寄る二人に反射で頷くと、二人は同時にクイ、とお互いを親指で指す。 「ズーズィが俺のサンドイッチ一個多く食ったッス」 「はい?」  サンドイッチ? 「ナッスンがボクのコーンクリームコロッケ三つも食べたんだよ」 「はい?」  コーンクリームコロッケ?  キョトン、と首を傾げる。 「え……いや、もしかして、そのぐらいで喧嘩してんのか?」 「「そのぐらいで!?」」 「ひっ!」  思わず率直な意見を言うと、怒りが収まらない二人は、カッ! と目を見開き、九蔵に掴みかからん勢いで相手の悪事を語り始めた。 「そのぐらいじゃないんですけど!? コーンクリームコロッケなんですけど!? てかクーにゃんの手作りなんですけどォッ!?」 「そうッスよ。なに言ってんスか? 俺のサンドイッチス。俺のためにココさんが作ったサンドイッチス。俺のスッ!」 「マジあり得ねぇしっ! 唐揚げも奪ったんだよこのおナス野郎呪うしかなくね!?」 「ナス言うな」 「ニュっちに殺されるからやめたけど脳内で一万回殺したわっ!」 「俺だって二万回殺したス。だってズーズィちくわの磯部揚げも一人で半分以上食ったんスよ? 死罪ス。たこさんウインナー独り占めしたのも極刑ス」 「はぁ~っ!? ナッスンだってアスパラベーコン二本食いしたじゃん!」 「シャケおにぎり奪うからスよ!」 「シャケは奪うっしょッ!」  ギャーギャーとお子様二人ががなる様子に、お母さんこと九蔵は口を挟むこともできない。  普段物静かな澄央がキレッキレ。  余裕綽々で人をおちょくるズーズィも、まるで小学生のようだ。 「ココさんッ!」 「クーにゃんッ!」 「は、はい」 「「どっちが悪い(スか)!?」」 「ええっ!?」  最終的に埒が明かなくなった二人は、九蔵に判定を求めた。  しかし九蔵だって求められても困るのだ。どっちの味方をしてもあとが怖い。オロオロと視線をうろつかせるが、逃がさないとばかりに二人の厳しい目が追い打ちをかける。  よし。やむを得ない。  こうなったら、苦肉の策だ。 「判定、ニューイさん」 「わ、私!?」  必殺、丸投げ。  投げられたニューイが飛び上がって顔を上げると、二人の視線は子犬な悪魔をズブリと突き刺した。 「ニューイ、俺たち盟友スよね?」 「ニュっち、ボクたち幼馴染みで大親友だよね?」 「あっあうぁ……っ!」  こうして、コトンと各々の関係性に変化をもたらした、遊園地ダブルデート。  ──そういえば、ニューイ……なんて言おうとしたんだろ?  九蔵は突然乱入した人間と悪魔の友人たちにより聞きそびれた言葉が気がかりだったが、過ぎたことかと思考を押しやった。

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