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 ──その後。  散々泣きじゃくった九蔵とニューイは、肌を重ねることなくただ何度も触れるだけのキスをして、お互いの言葉を擦り合わせた。  ニューイは九蔵に、イチルとの約束や自分の葛藤を、全て包み隠さず伝えた。  まさか自分のアレソレが謎玉により映像化され上映会が開催されていたとは思わず、九蔵が頭を抱えたのも、ハッピーエンドの笑い話である。  お陰様でニューイは九蔵の想いを知って泣きじゃくりながら飛んできたので、よしとしよう。  恥は晒してナンボだ。  ただし、全自動溺愛全肯定悪魔のニューイさん相手に限る。  そしてニューイ側の事情も全て知った九蔵は、ニューイを責める気なんて、これっぽっちもなくなったのだ。  けれどニューイは散々謝って、まるで自分のせいで九蔵もイチルも苦しんでいるかのように自己嫌悪する。 「私は、自分のいいところが見つけられないのだ……どちらも選べずどちらも裏切りそうだった自分のことを、とてもとても、嫌いになったよ……」 「はは、バカだなぁ。お前にはいいところばっかりあるのにさ」 「そうかい……?」 「そうだよ」  正直、言う。誰も悪くない。  ギュッと抱きしめて笑ってやると、ニューイは力強く抱き締め返して、九蔵の髪にスリスリとすりついた。  ニューイは自分に自信がない。  こうして抱き合って気づいたことだ。  伸ばした手を弾かれて生きてきたせいで、ニューイは自分の魅力に鈍感になった。  だからこそ、大事な人を傷つけると恐ろしくなって自分が大嫌いになる。  それに気づくと、少し自分と似ていると思った。キラキラの王子様の、寂しい傷跡。 「ニューイ、俺さ……お前が好きなこと以外、なんにも自信がねぇんだ」 「なんにも?」 「うん。でも、お前のことは、誰よりも好きな自信がある」 「そうなのか……」  離れ難いとしがみつくニューイの背中をポンポンとなでて、九蔵は恥ずかしがっていた自分の弱さを見せた。  すると、弱っていたニューイが顔を上げて、九蔵の唇にキスをする。 「自信がなくても構わない。九蔵のいいところなら、私がたくさん知っているよ。だから、教え合いっこをしよう」  ……慰めたのはこっちなのに、どうしてこっちを慰めようとするのだろうか。  九蔵はあてが外れて茹で上がってしまったが、それがニューイだから仕方がない、と納得した。  真っ直ぐなニューイ。  愛し方が底抜けなニューイ。  普通に考えれば「亡くなった彼女を忘れていないのに、別の人に恋をしてしまった!」なんて、ままあることだと思う。  人間の世界ではよくあることだ。  だが、ニューイはひたすらに一途である。一途すぎるくらい一途である。  だからこそ悩み、苦しみ、身を引き裂かれる思いをしていたと思うと、九蔵はニューイのことをいっそう愛しく思った。  ……とはいえ、一生懸命で真面目すぎるところも、多少限度があるのだが。

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