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番外編② 同棲カップルよ、付箋はこう使え!(side九蔵)

 ◆フォロワーさん555人記念SS。付き合った後。甘々。  付き合った後の話なので付き合うまで封印していたため、遅くなってしまった! いつもありがとうございまする……!  突然だが、我が家には付箋ブームが到来している。  原因は、ある日のこと。  賞味期限の確認と棚補充をしなければ、と、バイト中に貼っておいた付箋を剥がし忘れて、なぜか肘にくっついていた。  それを発見したニューイが面白がって、ことあるごとに付箋にメモを書き、俺の体や持ち物にくっつけるようになったのだ。  別に害はないけど、ってか割とかわいい……や、なんでもない。うん。  別にオタクの嗜みとして付箋コレクションをしていることもない。俺も仕返しにたまーに貼りつけたりするだけだ。うん。  ゴホン。そんな付箋ブームだが、油断すると付箋を貼り付けたまま出勤することになるのが玉に瑕だ。ナスやミソ先輩に笑われるので、恥ずかしい。  なので、俺は部屋から出る前、いつも体に付箋がついていないか確認する。  今日もそうやって確認すると、腰のあたりからベリッと付箋が一枚剥がれた。  ま、一応毎回内容も確認する。  俺は特に身構えることなく、付箋のメモを読む。 「〝アルバイトに行かないでください〟。……」 「…………」  部屋の中から玄関を見つめる拗ねた男に視線をやると、飛び抜けた長身とサラサラの金髪がサッと隠れた。  我が家の大きな子犬だ。  モロバレですよ、ニューイさん。  逸らすことなく見つめ続けるとニューイはそーっと顔を出し、俺と目が合うと慌てて隠れた。だから。モロバレだってよ。 「一応聞くけど、なんで行ってほしくねーの? なんか用事あるか?」 「……。九蔵と話す時間が減る」  隠れながら普通に返事をした。  おマヌケニューイめ。隠れてる意味ねーだろ。あとそれ用事じゃねぇからな。  別に照れてない。赤くなんかなってない。今日も俺の恋人は俺タラシイケメンな胸キュンサブマシンガンだな、とかも思ってない。  サスサスと頬を擦りつつ、仕方がないので、俺は玄関に置いてある付箋にボールペンでメモを書いた。  よし。あとは少しの勇気。  というか、彼女力。甘え力とも言う。ジーンズで手汗をゴシゴシ拭く。 「あー……ニューイさんや。俺さんはバイトに行くので、お見送りをお願いします」 「うむ。お見送るのだ」  見送りは断固するニューイなので、不満はありつつも、なんやかんやとガックリと肩を丸めながら玄関までやってきた。  ニューイはキューンと寂しげに眉を下げつつ俺の体を優しく抱き寄せ、首元へ頬をスリスリする。 「はぁ……九蔵に歩いてもらえる通勤路が恨めしいよ……」 「無機物になに言ってんだ。仲良くしなさいって」 「むぅ。私が九蔵を抱き上げて送り迎えをする許可がおりれば、通勤路と和解できる気がするぞ?」 「大真面目にボケんな」 「大真面目に大真面目である」  大真面目だからダメなんでしょうがこのスカポンタン。 (っても……マジでこんなデカい男、コイツは軽々しく抱っこするんだろうなー……笑ってさ……)  離れ難い腕の中でため息を吐く。  ニューイの肩におでこをコンと当て、無言でグリグリするまでが俺の限界だ。  ますます離れたくないとゴネるニューイ。  それでもいい加減離してくれと言えば、そーっとそーっと残念そうに離してくれるので、基本的に俺の言うことは聞いてくれるのだ。  ちなみにこれだけ渋っているニューイだが、バイトに行くのを止めたがるのは毎度のことである。  コレ、週五でやってんだぜ。 「もう行くぞ」 「うむ。九蔵。行ってらっしゃいのキスだが、今日はどこにしてほしいかな?」 「…………お好きなとこで」 「そうかい? それじゃあ私は、美味しそうなほっぺにしようかな。キミの魅力的な唇は、おかえりのキスまでとっておこう」  全く照れずに日常会話同然のテンションと姿勢でポンポンと甘やかしたニューイは、俺の顎を軽く掴んでチュ、と頬に口付けた。 「っ……」 「行ってらっしゃい、九蔵」  もう一度言う。  コレ、週五でやってんだぜ。  俺のメンクイハートと乙女ハートは、家から出るだけで、王子系悪魔型彼氏式サブマシンガンに蜂の巣にされてしまうのだ。  湯気が出そうな顔をいち早く俯かせ、俺は手に持っていた付箋をニューイの胸にポンと押しつける。 「っ?」 「行ってきます、ニューイ」  そしてなにか反応される前に、急いで玄関ドアから飛び出した。

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