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「むふふ、これで九蔵と離れずに済むのである……! 好きなだけ食べ物と飲み物も用意してくれているとのことだから、一緒に行こう、九蔵!」 「いやいやっ、王様に会ったら俺が人間だってバレんじゃねーのっ? それヤバくねーかっ?」 「それは問題ない。というか、悪魔王様には会場に入った時点でバレているぞ?」 「んなっ……!?」  なんてこったい。  入れ喰い状態にならないように魂の気配を全力で隠してもらい、痛々しい仮装までしたのに、実はバレバレだったなんて。  絶句する九蔵だが、ニューイは打って変わってニコニコである。  本気で九蔵と離れることだけが嫌で、あれだけ駄々を捏ねていたようだ。  九蔵は頭を抱えてワナワナと震える。  ニューイは九蔵をわふわふと抱えて嬉しがった。このフワフワ悪魔様め! 「バレバレって……! 不法入国の上に食材の俺とナスがバレバレじゃバッドエンド待ったなしだろ……!」 「仕方がないのだ。私とズーズィが本気で二人の魂の存在を隠蔽したところで無駄である。悪魔の世界の全てを見ることができるくらい、悪魔王様は目がいいからね」 「監視カメラがハイスペック過ぎる!」  ──それはつまりさっきの恥ずかしいイチャイチャも見られていたということじゃないか! 「知っていて扉が繋がったのだから公認である」と呑気にニコニコしているニューイだが、九蔵はいろいろと死にそうだった。  というか、悪魔王にバレているということは、実は会場の悪魔たちにもバレているのだろうか。  そうならもうなにも信じられない。  悪魔不信の九蔵である。 「普通の悪魔相手なら平気だぞ。私は本気で隠している。かなり本気だ」 「かなり本気か……」 「うむ。安心しておくれ。もし九蔵の魂がバレバレだったなら、今頃飢えた悪魔たちが列をなして食べられているだろうからね!」 「げっ……!」  茶目っ気たっぷりの悪魔ジョークに、九蔵は思いっきり渋い顔をした。  そういえば、いつの日かズーズィがそんなことを言っていた気がする。  本気だとも言っていた。  珍味扱いは勘弁だ。ニューイから別の意味で離れられそうにない。 「ニューイさんや」 「うむ」 「一緒に行きましょう」 「うむ!」  いいお返事のニューイさん。  悪魔王をこれ以上待たせないよう、九蔵はニューイに抱っこされつつ会場の端っこをコソコソと移動した。  悪魔王のいる場所は、パーティー会場の正面に階段から上がることができる小上がりスペースである。  そこを囲むように張られた天幕の中で、どんちゃん騒ぎをする悪魔たちの声を聞きつつ優雅な時間を過ごすのが、悪魔王のクリスマスらしい。  九蔵的にはちょいと羨ましい引きこもりブースだ。  姿を見られず豪華な食事とパーティーの雰囲気を楽しめるなんて、最高か。  羨ましがりながら天幕の前にたどり着くと、スス、とひとりでに口が開いた。こういうところはファンタジーらしい。  いよいよ悪魔王との対面。  ゴク、と息を呑む九蔵は、ニューイの斜め後ろで戦々恐々と天幕の中へ入った。 (……あれ?)  しかし、そこには誰もいない。  すぐにでも玉座に座る悪魔王が現れると思っていた九蔵は、拍子抜けしてしまった。

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