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「我のゲームの良さがわかるとは見る目があるらしい。人間。お主はゲームのプロであるか?」
「いえ、昔から趣味で様々な種類のゲームをほぼ毎日やり続けていただけです」
「なにっ……? 趣味、だとっ!?」
「へ……?」
しかしその返答に、常に落ち着いていた悪魔王の目のない肌から複数のギョロ目がクワワッ! と見開かれた。
口のみだった異形の顔にギョロ目がびっしり。明らかにクリーチャーである。苦手な人が見たら卒倒するに違いない。
九蔵はここにきて、痛恨のコマンドミスをしてしまったのだ。サッと青ざめる。
「ニューイ、それは真か?」
「む? うむ、真である。九蔵の職業はフリーターなのだ」
「フリーターッ!」
「正社員より時間の融通利きますからゲームしやすいんでっ!」
ニッコリ笑顔で肯定したニューイに、悪魔王は地響きじみた声をあげ卒倒しそうになっていた。
九蔵が慌ててフォローをしようとするが、時すでに遅し。
拳を握ってワナワナと震え、全身のギョロ目がさらに増える。怖い。
「なぜだッ! なぜプロであってくれぬ……ッ! 短命な人間の更に若人に趣味でワンパンされた我の地獄ステージの立場がないではないかッ!」
「い、いやそれはですね……!」
「悪魔王様、気にすることではないと思うのだ。九蔵は凄い。私は九十八回死んでしまったのに、九十八回見ていただけの九蔵が一回でクリアしたのだよ!」
「あぁッ! 見ていただけでッ!」
「み、見ていたからです! 初見だったら絶対にクリアできませんでした!」
▽ニューイは笑顔で追い打ちをかけた。
▽悪魔王に大ダメージ!
▽悪魔王は嘆いた!
九蔵の脳内に流れるキャプション。
悪魔王は九蔵自慢という名の一撃を食らい、ついに両手で顔を覆ってしまった。
冷や汗タラタラな九蔵が必死にヨイショするが完全に項垂れる悪魔王は、もうダメだ。しまいには玉座で丸くなる始末である。
悪魔王。
こんなに巨漢で恐怖の権化のようなラスボスでありながら、メンタルはスライム並みではなかろうか。
「プロでなくともせめてシステムエンジニアかデバッカーであればよかろう! フリーターなんてそんな平凡すぎる職業……!」
「いえ! 趣味と言っても友人がほぼいない私は普通の人間よりはるかに多くゲームばかりしていたので、プロ並みにゲームが得意になっていたかもしれません! なので仕方がないかと……!」
「そっそれは真かニューイっ」
「うむ! 真である。いつも九蔵はゲームをしているのだ。オトメゲームというイケメンがたくさん出ているゲームが一番得意なのだよ」
「ちょっ」
「待ていッ! お主アクションゲームは専門外ではないかッ!?」
「俺は手先が器用なタイプなので!」
「器用とかそういう次元じゃないだろう……っ! 恋愛ゲームが専門の趣味人にワンパンでクリアされた我の渾身のラストステージって……っ! ラストステージって……っ!」
「うむ、よくわからないが……九蔵は本当に手先が器用だぞ。なんせピコピコを握る私の手を上から操作してクリアしたのだか」
「間接操作ッ!」
「ニューイッ! お口チャックッ!」
「なぜ!?」
▽ニューイはトドメを刺した!
▽会心の一撃!
▽悪魔王は心が折れた!
そんなキャプションが九蔵の脳内で流れた後、断末魔の悲鳴をあげて萎れる悪魔王。
そしてただ恋人の凄さを自慢しただけでお口にチャックを言い渡されガーン! とショックを受けるニューイ。
──もしかして、悪魔って……ホラーな見かけを裏切るとんでもないヤツしかいねぇんじゃねぇか……?
たった一人の人間の行動に本気で落ち込む二人の悪魔の間で恐ろしすぎる予感を感じた九蔵は、オロオロと騒動の収集に励むのであった。
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