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「おう、旅立ち屋だぜ! 旅立ちに必要なものはなんだって売ってらぁな! でも旅立ち屋だとわかりにくいし売ってるもんは主に武器だから、主に武器屋よ!」
「なるほど。主に武器屋ですね」
わかっているなら初めから主に武器屋、もしくは雑貨屋と書いておけばいいんじゃないか。
沸き上がるツッコミをゴクリと飲み下し、九蔵はカウンターでガハハと豪快な笑顔を見せる店主に、ここはどこかと聞いてみた。
「ここは主に武器」
「すまん今のは俺の言い方が悪かった改める。この場所は、悪魔城じゃないんですか?」
「おう、悪魔城だ! ここは遊戯室だぜ!」
「遊戯室……」
一応悪魔城ではあったものの知らない部屋で、むむ、と困る。
店主曰く、遊戯室は悪魔王が集めた悪魔世界の書物やゲームが保管されている部屋で、一度入ると基本的には物語をクリアしなければ出られないらしい。
ドアを開くとゲームスタート。
中に入ると概ね干渉不可能。悪魔のゲームなので当然セーブシステムはない。
「心配しなくても悪魔がケガするような難易度じゃねぇぞ! こうして俺みたいなサポート小悪魔も配置されてるしな!」と笑う店主だが、愛想笑いをしておいた。
悪魔基準の難易度は、人間の即死。
ソースは遊園地。
ちなみに、入る物語は日替わりでランダムだそうだ。どこぞのラストステージより初見殺しの鬼畜仕様である。
死の予感に九蔵が深いため息を吐くと、店主が「アリス兄さんもよかったらうちで装備を整えていくかい?」と提案してくれた。
「素手じゃ不安なんだろ?」
「ありがたいですけど、俺お金持ってきてなくて……」
「それは気にすんなよ! スターターキットなら、旅立ち価格でタダなんだぜ! 物入りなら次の街に行くまでに稼いでおけばいいのさ!」
「ぅおっ、親切設計……!」
これは嬉しい誤算だ。
思いがけない優しいシステムにより、九蔵は旅の支度を整えることができた。
ドン! と中身がパンパンに詰まった革のバックを受け取り、店主に感謝する。お礼をなにも持っていないのが申し訳ない。
「あの、旅立つ前にもう一つ聞きたいんですが、白いフワフワしたこのくらいの大きさの生き物を知りませんか?」
「白フワ? 白ウサギのことかい?」
「やっぱあれウサギか」
白フワ改め白ウサギについて尋ねると、店主は「遊戯室のキャラクターは悪魔じゃねぇんだけど、勝手にウロウロするからなぁ~」と言った。
なんと、白ウサギは悪魔じゃなかったらしい。だから悪魔王に気づかれなかったのか。
「白ウサギがどこにいるのかはわからん。でも最近時計を失くしたとかで、どうにかなっちまったらしいぜ」
九蔵はそれを聞いて、そういえば白ウサギが時計を探してほしがっていたことを思い出した。
それを九蔵が断り続けたせいで交渉を脅迫に切り替えた白ウサギ。相当大事な時計なのかもしれない。
だとすれば時計を見つけてニューイの宝物と交換すれば、今後ニューイの宝物を餌にされることはなくなる。一石二鳥だ。
「よし。ありがとうございます、店主さん」
「いいってことよ! 小悪魔は悪魔と違って悪魔王様に仕えて城で暮らす小間使いのことだからな! 悪事を働くより悪魔王様に任された仕事をきちんとするのが俺たちの存在意義なんだぜ! 信頼していいぜ!」
最後までガハハと明朗快活に笑って親切にしてくれた店主にもう一度お礼を言って、九蔵は主に武器屋を後にした。
「ちなみに兄さん! 武器や防具は装備しねぇと意味がないぜ!」
「冒険の書はこまめに記録しますとも」
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