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 それからしばらく後。 「うし。そろそろ行くか」  気のいい店主にスターターキットと白ウサギの情報を貰った九蔵は、始まりの森でそれなりにレベルを上げていた。  まずスターターキットの要らない物を売り払い資金を増やし、回復アイテムを確保する。  ケガは命取りだ。  財テクの基本である。  そしてスライムやらゼリーやらを討伐し経験値を取得しながら資金確保。  それらをなるべくアイテムへと変えておく。現金は少なめが基本だろう。  ついでにレベルを上げつつ森の中で白ウサギも探し、戦闘にも慣れておいた。  あまり時間をかけるわけにはいかないので、同時進行は必須なのである。  実戦ならグロテスクなことになるのかと思った九蔵だが、杞憂だった。  戦闘はターン制。相手は動くぬいぐるみ。問題はない。 「スマホ圏外は痛ぇけど、時間は見れるからガチのリアルタイムアタックだと思えばなんとかなるか……? できればニューイが気づく前に帰りたい……んで宝物はなんとしても守りたい……!」  この状況よりニューイの宝物の安否と、単独行動がバレて仲間に探されるのが嫌な九蔵は、ところどころに目印をつけながら次の情報を求めて進んでいった。  ──九蔵がそうして祈っている頃。  ちょうど九蔵がいないことに気がついたニューイと悪魔王は、九蔵のための飲食物を並べていたテーブルを前に、神妙な顔で脳トレをしていた。  遊んでいるわけではない。  九蔵を探しに行こうと思った矢先メッセージに気づき、状況を理解してから動くために解読しているのである。 「急いでいたのか荒いが、書き置きだな」 「うむ。レッドホット溶岩ウサギのソテーにホワイトシチューがわざわざかけてあるみたいだよ」 「白いウサギか。攫われたり脅されて強制的にここから消えたのならメッセージを残せるわけがない。自主的に追いかけたのだろう」 「うむ。足跡らしきものも示してあるからね。それに誰の名前も示していないので九蔵の知らぬ白ウサギである」 「見知らぬ白ウサギについて行くとは軽率過ぎぬか?」 「それは、話の途中だった私たちに遠慮したのだ。しかし本当に危険な相手なら遠慮せず、まず報告するのが九蔵でもあるぞ」 「なるほど。では〝私は危険ではない知らぬ白ウサギを自主的に追いかけてきます〟と書き残した、と」 「うむ」  白いソースとウサギ肉、足跡だけでここまで示す九蔵と、ここまで読み解く悪魔二人。ナイス連携プレイだ。  道具がないここでなかなか上手くやったな、と感心する悪魔王だが、ニューイは心配そうにキューンと耳を垂らす。 「無限スライムゼリーを残していったにしては、帰りが遅い気がするのだ……」 「ふむ……いくら食らおうが元の形に復元するゼリーか……」 「すぐ戻る、という意味なのだよ……うぅ……追いかけたいが、過保護にすると九蔵に叱られてしまう……九蔵のすぐがどのくらいかはわからないが、私はもう寂しいのだ……!」 「残していった湯呑みの冷め具合を見るに、まだ半時間も経っておらぬ」 「あぁっ……! どうして私は黒ウサギなのだろう……っ!」 「お主はツノ骸骨だ。そしてクゾウは大事にしたくない故に書き置きを残したのだから、もうしばらく待機せよ」 「しばらくなんてとんでもない!」 「はぁ……気がつけば二百年も経っておった悪魔が、半時間でなにを言っておる……」  白ければ九蔵に追いかけてもらえたのかも、と寂しがるニューイを見つめ、悪魔王は溜め息を吐いた。

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